好きな漫画やキャラクター、アーティストを応援したくてファンアートを製作するのは楽しいですよね。
しかしファンアートを製作する時には、著作権法に気をつけなければいけません。
知らない間に訴えられてしまうこともあるので、ファンアートを製作する前に基本的な著作権法の知識を身に付けておきましょう。
目次
ファンアートを製作する時の注意点
ファンアートを製作する時は、対象となる漫画やアニメのキャラクターの著作権を確認しましょう。
著作物の二次創作利用は、著作者によって許容している場合と禁止している場合があります。
二次創作の許容範囲
ファンアートを製作する時は、まず二次創作の対象となる著作物を取り扱っている公式サイトで著作権に関する規定を確認しましょう。
二次創作についての許容範囲や、著作権の使用許可申請について、利用料や必要な手続きなどについての確認が必要です。
公式サイトでファンアートのインターネット上への投稿や作品の商用利用が禁止されている場合は、無断でファンアートを製作すると著作権侵害で訴えられる可能性があります。
許容されることもある
ファンアートのように著作物の二次創作作品をファンが製作しインターネット上で公開すると、公式グッズの売り上げに良い影響を与える場合もあります。
ファンアートを通して著作物の宣伝になることもあるので、公式サイトがファンアートなどの二次創作作品の製作や公開を許可している場合があります。
しかし許容されていても細かく条件が指定されている場合があるので、ファンアートを製作する時は公式サイトでの著作権の取り扱い方に従うようにしましょう。
模写やトレースの公開には注意
二次創作としてのファンアートは宣伝効果がある為、著作者の利益に繋がる可能性が高いです。
その為、著作者側から通報されたり訴えられたりしなければ、著作権侵害と判断されません。
ただし通常の二次創作ではなく、イラストの模写やトレースである場合は注意が必要です。
模写やトレースの場合、著作物を無断転載していると間違われて通報されてしまう場合があります。
SNSに公開してしまうと、著作者だけでなく他のSNS利用者から無断転載だと思われて通報されてしまうこともあります。
自分の完全オリジナルのイラストもしくは二次創作物でなければ公開しないのがおすすめです。
無断で使用される可能性もある
ファンアートをインターネット上に公開する時には、自分のイラストが無断で使用されてしまう可能性があることも覚悟しておきましょう。
二次創作物の著作権は製作者本人にあるのですが、インターネット上に公開すると不特定多数の人の目に止まり、無断でイラスト画像を保存されてしまう可能性が高くなります。
勝手に自分で描いたということにされる場合や、アイコン画像として使用されることも考えられます。
違法行為である為訴えられることはできますが、匿名で利用しているSNSアカウントの場合相手を特定する作業に時間とお金がかかります。
嫌な思いをしない為にも、ファンアートをインターネット上に公開する時は注意が必要です。
同人誌は違法なのか
同人誌は、漫画やアニメなどの既存のキャラクターを使って描かれています。
漫画やアニメには著作権が存在しているのですが、著作者がキャラクターの二次創作使用を許可していれば著作権法上では問題なくキャラクターの二次創作利用が行えます。
二次的著作物とは、著作権が存在している著作物をそのまま使用するのではなく、キャラクターを使用して独自のストーリー展開を製作したりオリジナルグッズを製作した場合に生まれる作品のことを指しています。
基本的には二次創作は違法とされています。
著作者の許可なく著作物を改変してしまうと翻案権、同一性保持権の侵害になってしまいます。
しかし、著作権は違法しても著作者が通報しなかった場合、罪に問われることはありません。
二次創作物は直接著作者の許可を取ってはいませんが、ファン活動として黙認されています。
漫画やアニメのキャラクターの二次創作物をインターネットに公開すると、宣伝効果を生む場合もあります。
芸能人のファンアート
芸能人はパブリシティ権という権利を所有しています。
権利者の許可なく肖像や対象人物を商品や商品の広告として使用すると、パブリシティ権の侵害になります。
芸能人にとって肖像は商品です。芸能人のファンアートは著作権法上では禁止されています。
しかし、販売用途ではないファンアートであれば、芸能人の宣伝効果もある為、現状では多くの芸能事務所が黙認しています。
しかし、芸能人側が不快に感じたり損をしてしまったりする場合は、肖像権侵害で訴えられてしまう恐れがあるので注意が必要です。
どうしても芸能人の似顔絵を描きたい時には、イラストをファンレターに添えて本人にプレゼントするのがおすすめです。
より芸能人本人に応援している気持ちが届き、喜んでもらえる可能性が高いです。
人物には肖像権がある
人物には肖像権といって、自分の写真を勝手に撮影されたり公表されたりする行為を禁止する権利があります。
肖像権は写真だけでなくイラストにも適用される権利です。
肖像権は芸能人だけでなく、一般の人も持っています。
もしも自分をモデルにしたイラストがインターネット上に公開されて不快に感じた場合には、訴えることができるのです。
ファンアートが原作者に喜ばれた実例
2016年Twitterで日本人が製作したハリー・ポッターシリーズのファンアートが原作者のJ.K.ローリングさんの元に海外のファンからの紹介で届き、原作者から製作者に喜びのメッセージが送られました。
1人のファンが趣味で楽しく描いたファンアートをTwitter上に投稿しただけなのですが、素晴らしい作品だった為原作者に喜んでもらえたのです。
著作権法での取り締まりが曖昧で公開しづらいファンアートですが、原作者に喜んでもらえたらファンとして嬉しいですよね。
著作権の種類
映画や音楽、小説などの作品には著作権があり、作者は著作者と呼ばれています。
著作権は著作者が著作物を販売したりインターネット上に公開したり、あらゆる目的において利用できる権利です。
著作者の許可なく無断で著作物を使用してしまうと著作権侵害となり、最悪の場合逮捕されてしまいます。
著作権侵害の罰則には罰金刑と懲役刑があります。
意図的でなくても著作者に訴えられてしまった場合これらの罰則が与えられてしまうので、ファンアートを製作する時には著作権についての知識を持っておくことをおすすめします。
複製権
複製権は著作物を複製、コピーして利用する権利です。
著作権法の中でも最も基本的な権利で、複製権は著作者が持っていますが、CDを販売したり漫画を印刷したりする際に著作者と契約している出版社が行使することが多いです。
複製権がある為基本的には著作者以外の人物が著作物をコピーする行為は禁止されているのですが、一部例外があります。
複製の用途が私的利用である場合のみ、著作物のコピーは許可されています。
自分が1人で楽しむ為にコピーするのであれば問題ありません。
ただしインターネット上に違法にアップロードされている音楽や映像データをダウンロードしてコピーした場合、違法となってしまうので注意が必要です。
翻訳権
翻訳権は著作物を翻訳したり翻案したりできる権利です。
小説を映画化するように表現手段を変えることを翻案と呼び、音楽を編曲する行為も翻案行為に含まれています。
著作権法第二十七条に著作財産権として規定されています。
日記やブログで翻訳した歌詞を掲載する行為は基本的には翻訳権の侵害になります。
ただしブログサービスによっては翻訳が許可されている場合があるので、歌詞の翻訳を掲載したい場合は許可されているブログサービスを利用しましょう。
ただし、翻訳権に関しては存続期間が設けられています。
著作物が出されて10年以内に翻訳物が出されなかった場合、翻訳権は消滅します。
もしも自分の好きな音楽や文学作品を翻訳したいと思った場合は、まずは対象の著作物の翻訳版が出版されているかという点と、著作物が製作されてから経過した年月を確認してみましょう。
10年以上経過して翻訳権が消滅しているのであれば、翻訳に関しては問題ありません。
しかし著作権は10年以上経過しても消滅しないので、二次的著作物として翻訳した作品を公開したい場合は、著作者の許可が必要となります。
著作者が二次的著作物の使用を許可しているのであれば、翻訳した二次創作作品を公開できます。
二次的著作物の利用に関する権利
ファンアートで最も深く関わる権利が、この二次的著作物の利用に関する権利でしょう。
著作物をもとにして製作された別の著作物に対して、著作者と同等の権利を持てます。
二次創作物の作者は、自分が製作した二次創作物の著作者になるのです。
二次創作物には原作者の持つ著作権と、二次創作物の作者が持つ著作権の2つが存在しています。
仮に第三者が二次創作物を新たに二次利用する場合、原作者と二次創作物の作者の両方に許可を得なければいけないのです。
二次創作物の著作権
同人誌や同人グッズのように、ある著作物を改変して新たに創作した作品のことを二次創作物と呼んでいます。
しかし、二次創作という言葉は著作権法で定義されていません。
著作権法では二次的著作物という言葉が用いられています。
また、二次創作物に近い概念でパロディ、オマージュなどの言葉もよく用いられています。
パロディはある作品を題材として新たに作品を製作することを指し、オマージュはある作品に対して尊敬の意味を込めて意図的に似た作品を製作することを指しています。
偶然似ている作品を作ってしまった場合
作品を製作していると、他の人の著作物の存在を知らずに似ている作品が完成してしまうこともあります。
このような場合には著作権侵害にはならず、二次的著作物として扱われることもありません。
ただし本当に偶然なのかと疑われてしまうことはあります。
世間的に有名な作品であれば「知らなかったなんて嘘なのではないか」と判断されることもあるのです。
個人で楽しむ用途で作品を製作するのであれば特に問題はありませんが、販売用途で作品を製作する場合は、他に似たような作品がないかチェックすることをおすすめします。
著作者の許可がいらないケース
著作物を著作者の許可なく使用できることもあります。
ただし条件があるので、ファンアートを製作する時は、著作者の許可なく利用できるかどうか調べてから著作物を利用するようにしましょう。
私的利用
自分や家族だけが使用する目的で製作された二次創作物は、著作権違反になりません。
ただし一部例外があります。
違法ダウンロードに該当する場合や、コンビニのコピー機のように公衆の場に設置された自動複製機を使用してコピーした場合、コピーできないように保護されているものを無理やりコピーする場合は、複製権違反となります。
ファンアートを製作しても、自宅に飾るだけでインターネット上に公開したり他者の目に触れる場所に持ち歩かなければ問題ありません。
公開されている作品の写真撮影
美術館や博物館では館内の写真撮影を禁止されていることが多いですが、屋外に設置されている作品であれば撮影可能です。
同じものを製作することは禁じられていますが、著作者から作品の撮影が禁止されていない限り撮影しても問題ありません。
公式サイトで著作物の利用が許可されている
公式サイトのガイドラインにおいて著作物の二次創作利用が許可されている場合は、著作者に著作物の利用許可を取る必要はありません。
インターネット上に公開する目的でファンアートを製作する場合は、公式サイトで著作権に関する取扱い規定を確認するのがおすすめです。
公式サイトで許容されていれば、二次創作物を製作してインターネット上に公開しても問題ありません。
マナーを守ってファンアートを楽しむ
ファンアートを製作する人の多くが、自分の好きな作品や芸能人を応援したいという気持ちでファンアートを製作しているでしょう。
著作権法上での取り締まりが曖昧だと、ファンアートに取り組みづらいですよね。
今後著作権法が変更される可能性もありますが、現状は著作者が二次創作物を許可しているのであれば気持ちよくファンアートを楽しんで問題ありません。
ファンとしてのマナーを守ってファンアートを楽しみましょう。