今はスマホやタブレットでのお絵描き環境が充実し、イラストを描き始めるハードルがとても低くなっています。
デジタルで描くだけでなく、鉛筆・ペンといったアナログで描いたイラストをスマホで撮って加工するアプリも随分と種類が増え、パソコンでイラストを描くのと遜色ない作品がSNSに日々あげられています。
絵を描き始めたい、でも器具を揃えたり片付けたりが面倒そう、という人にとってはこの上ない環境が整いつつあります。
目次
可愛い萌えイラストを描きたい!でも…
多くの場合、萌えイラストに憧れて絵を描き始める人がまず描くのは人間の顔です。
しかし描き始めは楽しくても、だんだんと「あれ…?」と思えてしまうのもお絵描きにありがちな現象です。
「あのイラストみたいに可愛くない」、「手足がおかしい」、「身体が長すぎる…」、でも安心してください。
そうした「違和感」に気づけることこそ、まず上手くなりつつある第一歩なのです。
顔が可愛くならない…
「萌えイラスト」とは一般的には可愛い女の子のイラストを指しますが、この「可愛さ」とは何でしょうか。
誰しもが知る、平安時代の作家であり歌人の清少納言が書いた枕草子では、「うつくしきもの(可愛いもの)」として、2~3歳ほどの子供の描写、おかっぱ頭の子供が首をかしげる様子など、子供の描写がいくつも綴られています。
このように日本古来からも子供の幼さ=可愛らしさとされているように、可愛らしさを表現したい場合、「顔のパーツや仕草が子供らしく、幼く描けているか」はとても重要なファクターなのです。
萌えイラストに多い幼い顔、ロリ顔
萌えイラストの多くもまた、キャラクター設定上の年齢はどうであれ、幼さに由来する可愛らしさを彷彿とするパーツ構成で作られています。
それがデフォルメされた大きな目、小さな鼻や口、柔らかな輪郭の頬といったものです。
しかし、これらのパーツを適当に配置しただけでは、ただ目玉の大きい不気味な顔になるだけです。
これを可愛らしく配置するには、実は「赤ちゃん」の顔立ちを参考にすると分かりやすいです。
あらゆる赤ちゃんに共通の顔立ち
人間の赤ちゃんにしろ、動物の赤ちゃんにしろ、多くの人は「赤ちゃん」を見た瞬間に「可愛い」と感じる傾向があります。
これは人間の脳が可愛いと判断する基準の中に、赤ちゃんの姿や要素が含まれている為です。
上記したようなパーツ構成に加えて、赤ちゃんの顔立ちの特徴とは、「広いおでこの下に、目と耳が顔の中心よりやや低めにある」、「目と鼻が近く、鼻と口も近い」というものです。
実際にネット上で赤ちゃんの写真を見つけ、顔立ちにアタリ線を入れてみると、どういう位置関係であるのかが明確にわかります。
これを踏まえて、萌え絵で大人びた顔つきにするならば、目の位置を上げて鼻から離してみる等、微調整を加えていきます。
可愛いパーツが描けない…
顔のパーツがどうしても可愛く描けない、これは単純に「どういうパーツが描きたいのか」具体的な図が頭の中に存在していない為です。
まず、萌え絵を描きたいと思ったきっかけの作品を見たり、その模写を何度もやってみましょう。
見ながら描くなら簡単だからわざわざやらなくても、と思うかもしれませんが、やってみると真似て描くというのはとても難しいものです。
大手のイラストコミュニケーションSNSであるpixivでは、多くのユーザーが「講座」というタグを用いて、各々の画風での目の描き方を紹介しています。
「こういうのを描きたい!」というお手本を見つけて、徐々に自分の描き方、画風を作っていきましょう。
体が描けない…
顔立ちの配置が判ってきたら、次は身体を考えてみましょう。
人間の身体を描くコツは、「基本的な比率」を理解することです。
女の子の体つきを描く上で欠かせないのが女性的なラインのメリハリですが、ここではもっと根本的な話をします。
ここを理解した上で、文字通りの肉付けとして胸を盛る、腰を細くするといったラインを作っていきましょう。
頭身のイメージを作ろう!
リアルな人間よりもデフォルメされているのが萌え絵の特徴です。
顔面のパーツ同様、筋肉のつきかたや骨の描写は、鎖骨、肋骨といった意図したフェチズムを表したい時以外は省略されがちです。
しかしリアルな人間の体型をそのままデフォルメするのではなく、より「見目良く」する事が、萌え絵の体の描き方として適しています。
基本的には頭1、胴2、脚3
頭の大きさを1として、首から腰までが頭2個分、腰からかかとまでが頭3個分、これが萌え絵に多い6頭身の描き方です。
この「頭身」の感覚は、まず基準となる頭サイズの〇を描き、その下に垂直に5個〇を並べていき、その丸の位置に合わせて棒人間で手足を描いてみると判り易いでしょう。
子供は頭1、胴1~2、脚1~2
小さな子供を描く時、上記の6頭身をそのままに適用すると「子供」ではなく「小さな人」に見えてしまい、歪になります。
子供には子供の頭身が存在しています。
基本的には実際の子供の特徴である「頭が大きい」を踏まえつつ、よりデフォルメを効かせていきます。
5頭身ではまだやや高すぎるので、胴か脚、どちらかを1として4頭身を目指しましょう。
より小さな幼児を描くならば、頭1、胴1、脚1の3頭身です。
より極端に、頭1、胴と脚合わせて1としてしまう、SD(スーパーデフォルメ)体型も存在しています。
これは元々頭身の高いキャラクターのデフォルメとして人気の表現です。
こうした2~3頭身の描き方は、大人気フィギュアの1つ「ねんどろいど」を見ればわかる通り、可愛らしさに特化した描き方になります。
頭1、胴3、脚4の理想体型
逆に、頭身の高いキャラクターを描きたい場合には、胴や脚に○を増やしていきます。
あるデッサン本では、美術モデル上の理想的な体型が8頭身で、9頭身は英雄体型であると表現されています。
すらりとした恰好良いキャラクター、筋骨たくましいキャラクター、どちらを描く時も、こうした比率を参考にすると描きやすくなります。
極端に脚が長すぎる、胴が長すぎるキャラクターが居たとしても、意図して「そういうキャラクターだから」と描くのなら全く問題ありません。
小柄な女の子を描きたいのに英雄体型になっている、あるいは長身で恰好良いキャラクターなのに手足が寸詰まりになっているようなら、頭身を見つめ直してみましょう。
手足が難しい…
身体全体の比率が理解出来たら、次は手足のバランスです。
まず頭身をしっかりと把握することで、腕の長さ、脚の長さ、手の大きさといった他パーツのバランスが把握しやすくなります。
より上手さを求めるならば、太ももの太さ、膝の細さ、ふくらはぎのラインなど、筋肉・骨の付き方に由来する滑らかなデフォルメを覚えるとより見栄えが良くなります。
手足の位置・サイズにも比率がある
腕の長さは一般的に、立ったまま腕を胴に沿って降ろした時、肘がおよそウエストのあたり、手首が股の(股間)の高さと同じあたりとされています。
そして手は、指を広げたときに腿の中ほどまでの長さになります。
これは同時に、男性ならば手を広げた時の大きさが顎先から額の中ほどの長さ、横幅は顔の2/3~全体を覆えるほどの大きさとなります。
女性ならばそれより小さめに、顎先から眉毛に届くか届かないか、横幅は顔の1/2を覆えるほどの大きさが目安になります。
こうした比率は実は体の各パーツに存在しており、知っていると、「ウエストがこの位置だから、腕の長さがこうなる」、「顔の大きさがこれくらいだから、手の大きさがこれくらいだ」という、絵を描く上での補助になってくれるのです。
好きな漫画を参考に!
しかし、こうした比率に関係なく、手足を大きく描いている作家はたくさんいます。
彼らは「その方が魅力的である」と感じ、そうした画風を貫いています。
絵柄と合致すれば、バランスを崩すことで生まれる個性的な良さもあります。
手足が大きい事は、印象としては力強さを感じさせる表現になります。
逆に手が小さいく細いのは繊細さを感じさせる表現です。
萌え絵では後者が多い傾向がありますが、デフォルメ絵ではあえて手足を大きく描くことでシルエットに特徴が出せる利点もあります。
服の皺がわからない…
顔、肉体ときて、難しいのは衣服です。
特に可愛らしさの表現として用いられフリルの難しさは、初心者には高い描画力が必要で、とてもハードルが高いです。
難しいだけあって、服の皺やフリルの描き方の講座は比較的たくさんあります。
分かりやすく、描きたい表現に近い講座を見つけて真似をしてみるのが近道です。
人の動きに引っ張られる皺
服に皺が寄るのは、かかった力によって服がたわみ、凸状の部位が出来る為です。
萌え絵では省略されていることも多い衣服の皺ですが、簡易的に入れられると、絵に動きを彷彿させる表情が出てきます。
押し込まれた布は凹み、その反対側に凸の部分が出てくる、押し込まれた部分の縁は盛り上がって見えます。
実際に布を押して観察してみたり、アグレッシヴな動きをするスポーツの選手のユニフォームやダンサーの衣装を見て、肉体に密接した部分の皺の寄り方を参考にできます。
なんだか仕上げが物足りない…
絵を描けるようになってきた、色塗りもしているけれど、もう一味加えてみたい。
そんな時に有効なのが、「テクスチャ」を用いた加工です。
最近では画像加工アプリも数多く出てきているので、描いたイラストの色味を変える加工が容易です。
しかしアプリを用いなくても画像編集ソフトがあれば比較的簡単に色味や深みを足すことが出来るのがテクスチャ加工なのです。
全てとは言い切れませんが、商業用の多くのイラストでは大なり小なり仕上げ加工に用いられている、立派な画像加工技術です。
キラキラなテクスチャで鮮やかに!
テクスチャによる加工とは、絵の上に模様や光沢の入った全く別の絵=テクスチャを重ねて合成することで、元々の絵にその模様・光沢を写し込む加工です。
レイヤーの使える画像編集ソフトがあれば誰でも簡単に出来る加工方法で、このテクスチャもまた、pixiv内ではフリー素材が多く投稿されています。
ダウンロード、或いは自作したテクスチャを、加工したい絵の上のレイヤーに置き、レイヤー表示欄にある「合成モード」を「乗算」」「スクリーン」「オーバーレイ」と変えてみましょう。
「不透明度」を調整することで更に雰囲気が変化していきます。
気に入った加工が出来たら、最後に画像を統合して完成です。
合成モード:乗算って?
合成モードもまた、レイヤーの使える画像編集ソフトではまず間違いなく存在している機能です。
乗算とは下にあるレイヤーの色に、設定中のレイヤーの色を半透明にして重ねる、掛け合わせる合成方法です。
色が合算されるので濃くなり、元々の色を残して別レイヤーで影を塗りたい時にも使えるモードです。
合成モード:スクリーンって?
スクリーンとは、下にあるレイヤーの色を反転させ、更に設定中のレイヤーの色を重ねる合成方法です。
画像の濃度によって色が濃くなる=暗くなる乗算と違い、スクリーンでは画像の濃度が濃い程、色が明るく合成されます。
不透明度100%では白飛びしてしまいがちですが、不透明度を下げればふんわりと明るい雰囲気を出せます。
合成モード:オーバーレイ
オーバーレイとは乗算とスクリーン、双方の効果を持つ合成方法です。
色の明るい部分はスクリーン効果に、色の暗い部分に乗算効果が現われます。
明るい所はより明るくなり、暗い所がより暗くなるので、色味が弱いイラストに明暗のメリハリを効かせたい時に便利です。
画像編集ソフトによっては更に種類がある合成モード
上記3つの合成モードは、レイヤーが使えるほとんどの画像編集ソフトで扱えるモードです。
より高価な画像編集ソフトでは、更に多くの合成モードや「フィルタ」というより複雑な加工モードが存在します。
良いソフトを使っているけれど、意味がわからなくて使った事が無い人は、このテクスチャ加工を足掛かりにどの合成モードがどういった効果を持っているのか確かめてみましょう。
理想的な加工方法が見つかれば、イラストで表現できる雰囲気の幅が一気に広がります。
漫画、ソシャゲ、静止画メディアはお手本の宝庫
萌えイラストを描きたくなった時、そのプロ・アマチュア問わずお手本となる作品がたくさんあるのが現代の良いところです。
作家自身による作品のプロモーションやファンイラストの自発的な投稿など、毎日たくさんの絵がSNSで投稿されています。
そうした絵の中から、「いいな!」と思った絵を真似て描いてみるのも、絵の上達には欠かせない要素です。
しかし、その絵を自分も投稿するとなると、問題が発生する事があります。
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」説!ただし自作発言はNG
何かの絵を真似て描くまでは全く問題ありません。
しかし、第三者が考えたポーズや絵柄を「自分が考えたかのように」投稿してしまうのは、俗にトレパク、パクリと呼ばれる推奨できない行為です。
相手も同じSNSをやっている所に投稿している場合、遅かれ早かれバレてしまい、炎上に繋がってしまう可能性があります。
悪意が無い行為であっても、元々の作者にとっては盗作されたも同然です。
誰かの絵を完全に真似て描きたい場合は、あくまで勉強の練習としてのみ描き、投稿しないようにした方が、問題が起こりません。
堂々と自作ですと言える絵を投稿しましょう。
可愛く描ければ嬉しくなるのが萌え絵の醍醐味!
萌え絵を自分でも描けるようになると、自分好みの女の子を、自分の見たい表情で、自分の見たいポーズで描く事が出来るという、創作においてとても嬉しい瞬間を幾度も生み出すことが出来ます。
SNSに投稿することで、それを誰かに気に入って貰えればより描く楽しさが増していきます。
ネットのお絵描き界隈では、自分の創作したキャラクター、特に女の子を「看板娘」として称する文化があります。
あなたも自分の「看板娘」を作って、SNSの世界に披露してみましょう。